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もう終わりにしよう。のtubure400のレビュー・感想・評価

もう終わりにしよう。(2020年製作の映画)
4.0
今でも心のNo.1映画『脳内ニューヨーク』を初めて観た時の衝撃が大きくて、後追いで観た『アダプテーション』や『マルコヴィッチの穴』も大好きになったチャーリー・カウフマン。『アノマリサ』もすごく悲しい話で好きだったけれど、それから何年も待たされて、新作が突然Netflix配信というのも近未来感があって嬉しかった。

内容は、引用で紡がれる、どうしようもなく絶望的な世界観についての映画という感じだ。奇想天外なストーリー・ラインが常に準備されていたり、感動的っぽいシーンでは敢えてすごく感動的なBGMを使ったり、アートとエンターテイメント性とのバランスの取り方が魔法のようだった過去作と比べて、ひたすら、なんだかアーティに嫌な感じ、精神世界に迷い込んだ感じが延々続く。それはそれで、振り切れた感じがして楽しめなくはない。フロイト的なトラウマ、悔恨、時間の流れ。我々は点で、時間が冷たい風のように我々の中を通り抜けていく。自己言及と知的な引用、細かい仕掛け。最終的には俗物的な妄想とともに、ウジの沸いた豚のように死ぬということ。そこに深い感動があるかというとそういうわけでもなくて、最終的に浮かぶのは、なんか、可哀想だな、という感想だけだ。

『脳内ニューヨーク』でフィリップ・シーモア・ホフマン扮する主人公はbrutal, brutal, brutalな現実を描こうという決意をする。とはいえ、それとは裏腹にいくつかの人生の美しい場面に遭遇する、それは主題歌の「Little Person」で歌われる、どこかに自分のことをわかってくれる人がいるかもしれない、というかすかな希望のようなものだ。そこの屈託に満ちた描き方というのが素晴らしいと思っていた。この映画にはそういう甘さはかけらもなくて、非常にシビアーな、brutal, brutal, brutalな現実を、幻想的ではあるもののある意味直截に描いた映画という感じがあって、とはいえ、なんで今これやねん、という釈然としない思いを抱かなくはなかった。
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