荻昌弘の映画評論

おどろき一家の荻昌弘の映画評論のネタバレレビュー・内容・結末

おどろき一家(1949年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

 ファルスとも新派悲劇ともつかないこの一篇で、齋藤寅氏は存外神妙である。というより笑いの要素すべてをアチャコひとりにあずけて、あとは野となれとフィルムの回転に委ねきったと言う方が正確であろうか、入江たか子の未亡人が転げ込んで来て、主人のアチャコは眼尻を下げ、細君の清川虹子は眼尻を上げる。
 神妙になった斎藤監督が手を拱いて唯それだけの反応を見ているばかりとしたら、このたわけたストウリイからわれわれは一体何が引出せるだろう。ロジックも何もない脚本、俺の領分じゃねえと放り出した据え放し演出、この無責任なゲタの預け合いで迷惑するのは、まっとうに笑ったり泣いたりしようと出掛けた善良な観客ばかりである。
『映画評論7 (2)』