南森まち

僕と頭の中の落書きたちの南森まちのレビュー・感想・評価

僕と頭の中の落書きたち(2020年製作の映画)
5.0
統合失調症になり傷害事件を起こした少年。転校し高校卒業を目指すが、薬の副作用に苦しむ…というお話。

これは大傑作!メンタルヘルスに苦しむ人が多い現代社会、ぜひ一度はみんな見てほしい。
精神疾患という重いテーマを扱いながら、暗いばかりではなくコミカルに波瀾万丈な主人公の青春を語るストーリーになっており、制作陣のバランス感覚に驚かされる。

症状を抱えた少年を受け入れてくれるカトリック校で待っていた学生生活は、他校とたいして変わらないモノだった。しかし一人の友人を得たことによって、彼の状況は大きく変わっていく。治験中の新薬も効果を発揮し、精神的な不安も収まりを見せるのだが…。

彼の孤独・不安・プライド・希望…さまざまな感情を、時には医師、時には教師、時には親、時には神父…といった視点から丁寧に表現していた。
同様の症状を抱えた人に降りかかる問題と、それに対する熱いメッセージが込められている。特に、最後の主人公の語りは大きく心を動かされるものだった。

映画としても、演出上の幻覚や動揺の表現がコミカルだが分かりやすかった。
もちろんあんなにはっきりとまぼろしは見えないだろうが、精神的に追い詰められて叫びだしたくなるような不安な気持ちを表現できていたと思う。

本作内で触れられる映画『グッド・ウィル・ハンティング(1997)』と『25年目のキス(1999)』を見たくなった。

これは、私の人生を変えてくれる一本になるかもしれない。それくらいオススメです!