cham

ボヤンシー 眼差しの向こうにのchamのレビュー・感想・評価

4.2
すごく観てよかったんだけど、観てよかったとはたやすくいえない93分がずっと地獄のように感じる作品だった。

もともと大家族の中でも労働者としてしか将来を期待されてされていないカンボジア人の14歳の少年。ほかに生きる選択肢がない自分の生活環境に嫌気が刺した彼は親も兄弟も友達も捨て、生まれ育った村から逃げ出す。しかしたどり着いた先も、奴隷のように働くかそれが嫌なら殺されるか二択しかない地獄のような漁船だった。雇い主にひどい扱いを受けるだけではなく、生きていくために労働者同士もつぶしあう。生きる道を選ぶにしてもこんなにも希望がない人生ってなんなんだろうか…。
彼はどこへ向かって行くのだろう。微かな希望を期待しながらも絶望も感じる。

映画の中でも、東南アジアの海の上では20万人以上の奴隷労働者が働かせられている現状があるという説明が入る。
人間が人間として扱われない描写が続き、心がすり減ってしまう作品だったけど、これを観て日本に生まれてよかったなんて言えない。漁船だけに限らず、貧困に苦しむ人々を利用して彼らをだますような形で労働に引きずり込む。
みんなが普通に生活しているなかで気づかないようにしてること、目を背けてはいけない現実を叩きつけられる。
cham

cham