いろどり

アル中女の肖像のいろどりのレビュー・感想・評価

アル中女の肖像(1979年製作の映画)
4.5
圧倒的な美。主演女優タベア・ブルーメンシャインの美貌を存分に活かしたファッショナブルな衣装、スタイリッシュな映像で2時間いける。序盤の空港のガラスのシーンでゾクゾクしびれた。この映画は当たりかも!という思いを噛みしめるシーンに最初に出会えたことで、陶酔鑑賞(近くに座っていた男性は寝息をたてていた)。

社会の規範を押しつけられ、レッテルを貼られて抑圧された女性あるいはマイノリティたち(カートを引いたホームレス、女装男性、同性愛者、小人症の人など)の内在するエネルギーが、飲酒や破壊行動に向かっていく様子を描いたと思われる。

そのため、抑圧された主人公の彼女はほとんどしゃべらない。一面鏡張りの部屋で、踏みつけた鏡がことごとく割れていくシーンこそ、自己破壊の描写の最たるものであろう。センス抜群!
女性監督が撮ったというところに大きな意味がある。一切、話さないのかと思ったら、途中で歌い出してびっくり。
酔っ払って下手だったのがツボ。

あんなに泥酔しても美しい顔をキープできるのは美人の特権。ベロベロになったらあんなハイヒールでカツカツ歩けないよ。

ことあるごとに現れる3人の女性、「良識」、「正確な統計」、「社会問題」さんたちが、求めていないのに良識や統計、社会問題についてワーワーとまくしたてるのが面白い。
こうゆう人たちは現代にもいるし、マジョリティは彼女たちに縛られているといえる。
それでも「正確な統計」さんが同性愛者の多いクラブで踊りに誘われて笑顔で踊ったり、「良識」さんがお酒のグラスを渡されてグイと飲んだりしているところが良い。
話の本筋とは関係ないところで意味ありげな言葉を乱射してくるのは、「気狂いピエロ」を思わせる。

ファスビンダー監督と同格のセンスの塊。
やはり同じ国、同じ時代の映画監督は、互いに刺激し合う相克関係になりやすいのかもしれない。

意味のありそうななさそうな映像も多く、そのすべてがカッコ良い。わかりやすすぎず、意味不明というほどではない。これは好みの映画だった。
この映画でワイン1本いける🍷
いや、この場合はコニャックかな。
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