shiroiwa

ヘイターのshiroiwaのレビュー・感想・評価

ヘイター(2020年製作の映画)
5.0
Netflixにて突如配信されたポーランド発の衝撃的なスリラー。

ロースクールを除籍になった学生 トマシュは、強引な手口でとある企業に就職を決める。

その会社は依頼をもとにネット上の特定アカウントに対して印象操作を行い、
良い意味でも悪い意味でもバズらせるアンダーグラウンドな会社であった。

好きな子に振り向いてもらいたい、まわりを見返したい、そのためならどんな手段も厭わないことが序盤から示されていて、就職してからのトマシュは、まさに水を得た魚(ピラニア)のように次々と成果を上げていく。

「searching」でもあったスマホやPC画面を使った心理描写、藤井直人監督の「新聞記者」で描かれた架空のアカウントを使っての印象操作など、
ネット社会の闇を中心に、人間の深い心の闇が広がるさまがじっくりと描かれていく。

道をふさぐレイシストの集団に対してゾンビだと呼ぶシーンがあるが、
そのイメージは〝一つの情報によって右へ左へと簡単に意見を動かされ、具体的な行動にすら出てしまう半ば思考停止した現代人〟の姿と重なる。

憎悪に駆られて罪を犯す人間たち。
彼らを全面的に否定することはできない。

彼らと同じ現代を生きる我々には、その憎しみに見覚えがあるはずなのだ。
俳優陣の高い演技力の影響で、感情移入度が高いせいもある。

傷だらけの姿になりながら、どんどん深い闇に飲み込まれていく、ひりつくような展開。
こんなに〝痛々しい〟話があるだろうか。

約130分、あっという間。
ぜひ結末を見届けてほしい。
Netflix会員しか観れないのが残念だ。
shiroiwa

shiroiwa