ハンスウ

海辺の彼女たちのハンスウのレビュー・感想・評価

海辺の彼女たち(2020年製作の映画)
3.9
これは作品全体のリアリティっていうのが絶賛されているみたいですね。ドキュメンタリーのようなリアリティとか。だけど私はそれよりも説得力のあるフィクションが好きで、たとえそれがデフォルメ効かせまくりのお芝居だとしても説得力があれば高く評価したい人で、実話を元にした現実さながらのリアルな作りの映画は評価を低くしてしまいがちなひねくれ者なんですよ。ドキュメンタリータッチっていうだけで避けてしまうきらいがあるんですけど本作は1時間半以下だしなんとなく気分が乗ったので観てみました。

なんの情報も入れずに観ましたがいきなり夜逃げするとこから始まる。ああ、これから少しずつ状況が明らかになっていくんだな、って思う間もなく映像を見ているだけですぐに察しがついた。もう、ひたすら寒々とした映像が流れて不安にさせられる。ドキュメンタリータッチの重い作品は敬遠したくなるけど途中でやめようとは思わなかったです。最後まで登場人物たちの行く末を観たいと思わせられました。技能実習生の話です。

CATVの日本映画専門チャンネルの月一衝撃作っていう枠で放送されたんですけどあんまり衝撃だった試しがないんですよね。だけど本作は中盤まで進んだ時点ですでにかなりの衝撃を受けた。取材もリサーチもして作ったフィクションだとは思うけどメインの3人の俳優さんたちの存在感にウソくささはミジンも感じられず観ていてどんどん引き込まれる。傍観するのがあまりにも恥ずかしすぎるからせめてこの映画くらいはしっかり観よう。

外国人技能実習生を受け入れるならしっかり支援体制を充実させてほしい。人手不足が広がる中で、曲がりなりにも日本経済を支えてくれる人たちなんだし、こういうところで日本の税金を使ってほしいと思ったのは、登場人物の3人が馬小屋みたいなところで寝泊まりしているからだ。

何も明るい兆しが見えないまま、無力感に襲われるだけの映像が続いて主人公は雪にも雨にも見舞われるが、繊維に水が染み込む安物のダウンジャケットでしのぐしかなく足取りも重くなる。救いがどこにもないままクライマックスに向かうが、そのラストシーンの衝撃は、エンドロールが流れている間にじわじわと容赦無く突き刺さってくるようでした……。
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