『海辺の彼女たち』というタイトルからは、海辺の町を舞台とした、爽やかな少女たちの青春グラフィティのようなイメージがまず連想される。本作はそんなイメージとは真逆で、確かに海辺の町が舞台ではあるが、「海辺」は単なる舞台としてではなく、象徴的な意味を持って迫ってくる。寄せては返す曖昧な境界。ただ、それでも絶対的な境界。危うい。
彼女たちがどこから逃げ、どこに辿り着いたのかを読み取ることはできるが、はっきりとは語られない。彼女たちがどんな環境下で生きていたのか語られはするが、はっきりとは映されない。それよりも切実なのは、映すべきなのは生きるためにスープを啜る、その姿。
ソフト化されることのない中、観賞機会を見つけられた幸運。並大抵の作品ではない。