至極当たり前のことだけど、スクリーン内には時計がない。それでいてそこは光を落とした空間だから、スクリーン内で流れる時間は、スクリーンに映されるものに依存することになる。
普通の物語であれば、基本的に時>>続きを読む
「ちょっとさすがに出来すぎちゃってる映画なんじゃないの~」と、らしくなさを感じていたら、トレントがスクリーンに入ってくる時に、ちゃっかりポップコーン持ってる辺りがカーペンターらしくて笑えた。
紛うことなき傑作『野火』を想起せずにはいられないタイトルの本作は、エンドクレジットのスタッフの少なさからも分かるように、塚本晋也作品の中では非常にミニマムな作りになっていると思う。女が薄い布団の上で身>>続きを読む
テルマとルイーズが運転するグリーンのサンダーバードは、まるで犯罪を犯して逃亡している人が乗るような車には見えないほどに目立っているが、そのことが逆に彼女たちの生々しい主張そのものであるかのようだ。「私>>続きを読む
何年にも渡って、父がしつこいほどに薦めてくるので、いよいよ鑑賞。
最初はクロンナウアのジョークの面白さも分からず(だんだん笑えるようにはなる)、ただただマシンガントーク(台本?アドリブ?)に圧倒されて>>続きを読む
「ここではないどこか」でスターになる計画も意志も悉く挫折させられるのならば、いっそ「ここ」でスーパースターになってしまおうという、パールのガッツ溢れる凶行は、どこか胸の空くような感覚を覚える。映像とし>>続きを読む
最終的に物語を総括すれば、小学生の夏休みの宿題で感想文の題材にできそうなくらいの、1人の少女の成長譚であって、多少の血の描写に目を瞑れば、10代に差し掛かった子供に見せても、十分に楽しんでもらえるもの>>続きを読む
『エンニオ・モリコーネ特選上映』の、あの予告編を見てしまったら、誰だってスクリーンに足を運びたくなるってもんです。彼の音楽を聴くのにスクリーンほど適した場所はないわけでしょう。
もっと落ち着いた展開>>続きを読む
インガーの葬儀は、棺を中心に据え、線対称に椅子が配置されているカットから始まる。淡い光の差すシンメトリーの構図に、ドライヤーの、このシーンに懸ける気合いを見て、こちらも椅子に座り直した。室内の各所に置>>続きを読む
先日「午前十時の映画祭15」のリクエスト作品の投票が始まり、投票できる5作品の内の1つとしてこれを選んだのは、あのアンソニー・ホプキンスの無機質な表情を大画面で観たいと思ったからだったけれど、前回観た>>続きを読む
バイクのスピードが上がるほどに、カットの切り替えも速くなっていくから緊張感が凄い。
それにしてもいくら急いでるからって、自分だったらガソリンでびちょびちょになった時点で、「次のフェリーでも良いんじゃな>>続きを読む
アンネの目は恐ろしく鋭い。それはアプサロンが言うように、無垢な瞳ゆえか、彼の母が言うように焔のような邪悪さの表れなのか、それは分からないけれど、いくつかの偶然の重なりから自らに秘められた力を信じてしま>>続きを読む
僕にとってハーヴェイ・カイテルは、まるでクラスメイトとの恋愛のように、センセーショナルな一目惚れではなく、同じ時間を共有していく中で段々と惹かれ、「この人好きだな」と思うに至った存在なのだが、そんな彼>>続きを読む
念願の観賞だったのだけれど、結構喰らった…
『14才の栞』を観た時に、一人の女の子が「ダサい大人にはなりたくない」と話していて、久しくそんな事を考えていなかった自分に気付いて身の引き締まる思いをしたの>>続きを読む
ジョン・カーペンター作品の「今、これ何の時間?」っていうシーンを無性に味わいたくなる時があるけれど、本作でもきちんと嵐の3人組がその気持ちを味わわせてくれた。なんでもありのカンフーアクションと気の抜け>>続きを読む
「"人間の顔のもつ弱さ"…サルトルよ。」
予告編を初めて観た時、『アデル、ブルーは熱い色』でレア・セドゥ演じるエマの言葉を思い出したのは、オッペンハイマーを演じるキリアン・マーフィーの顔に目を惹くよう>>続きを読む
『落下の解剖学』という意味深かつ印象的なタイトルから、私は安直にもマチュー・カソヴィッツ監督『憎しみ』の「問題なのは落下ではなく―着地だ。」というエピグラフをなんとなく思い起こしてしまうのだが、観賞後>>続きを読む
なぜだかベルナルド・ベルトルッチとリチャード・アッテンボローを混同していて、溥儀が紫禁城を追い出されて以降の、時代のうねりと呼応する重厚なドラマを観て、「さすがは『ガンジー』を撮った監督だ…」なんて考>>続きを読む
予告編でブロンドのミア・ゴスの姿を見ただけで、この映画は何かヤバい匂いがぷんぷんするぞ、と感じた気持ちそのままに、彼女にばかり注目していたら、「あれ…?ミア・ゴスってこんな声だったっけ?こんな可愛い声>>続きを読む
こういう作品なんかは絶対メイキングが面白いはずで、カメラが入った初日の教室の雰囲気とか気になるし、どれだけの時間をかけてゆっくりと教室に溶け込んでいったのか知りたい。
札幌での新生活1本目の映画は、安心して観ることのできる傑作からスタート。
今回の観賞で目に付いたのは、サム・ニール演じるスチュアートと、ハーヴェイ・カイテル演じるベインズだ。まずこのキャスティングが素>>続きを読む
最初から最後まで、つたの家一の売れっ子に見える岡田茉莉子があっさりと別のところへ移っていく、あの感じがたまらない。
クライマックス、ジェイクが一塁に向かって全力疾走する姿をカメラがスローで捉えたとき、友達が「足が…」と呟いて、「そうか、この人は膝に爆弾抱えてたんだ。」と思い出して、いたく感動してしまった。
そもそも全てが勘違いだったかもしれないという危うさを最後まで抱えながら、約2時間、こんなにもシンプルなプロットでスマートに映画を組み上げるヒッチコックの手腕が冴え渡る。
「『ストリート・オブ・ファイヤー』の若いウィレム・デフォーは蛇みたいだ」という話を聞いて、どんなものかと思ったが、キレキレで超クールなデフォーにとにかく釘付け。『フィールド・オブ・ドリームス』のお母さ>>続きを読む
序盤はセンスのある展開が進んでいくのに、徐々に無理矢理に変わっていき、「最初はやる気あったのに、作るのがだんだん面倒臭くなってきちゃったのかな?」と考えてしまうような出来。それてもオープニングでの期待>>続きを読む
昨年のアカデミー賞で主演男優賞ということで、当時は「へぇ~」としか思わず、特に観ようとはしていなかったけれど、たまたまWOWOW(だったか?)でCMを見て、そこに映っていたセイディー・シンクの表情がガ>>続きを読む
モナは身分証を持たない死体として発見される。それもそのはず、彼女は生前から、自らがどういう存在かを証明するモノを持っておらず、その役割を果たすのは、ただ今ここにある自分の身体だけだった。その潔さは、自>>続きを読む
こういう軽やかなホラー・オムニバスは、最近あんまりないなぁ。
真紅の看板の鎖が千切れ、風に揺られるカットから始まり、真っ赤な受話器が揺れるカットで幕を閉じるラストに痺れたし、まるで連続ドラマのような、登場人物を紹介していくオープニングも目を惹く。ただ、脚本として>>続きを読む
「お前にはもっと80's後半から90's前半のコメディ、特にスティーヴ・マーティンの映画を観て欲しいな」という父の言葉と共に薦められたのがこれだったのも納得の面白さとスティーヴ・マーティンの魅力が詰ま>>続きを読む
ボーは多くの(仕組まれた)不条理に見舞われて、どんどん追い詰められていく。作られたスキゾフレニーの世界。原因が無いのに、怒鳴られる、襲われるなど結果だけを外部から浴びせ続けられる。そんな時に逃げ込みた>>続きを読む
たぶん幼稚園か小学生、そのちょうど間くらいの時期に、家のHDDに録画されていて、何度も繰り返し見た思い出がある。とはいえ、面白いものというよりは、怖いものという印象の方が強くて、特に人のいないゴースト>>続きを読む
本作のリメイク元であるダリオ・アルジェントの『サスペリア』は、背景でバレエスクールが焼けるなか、スージー・バニヨンが意味深な微笑みを残して去るという印象的なシーンで締め括られるが、このラストには様々な>>続きを読む
あえて凄く単純化すると、いつも隣に居てくれる人がいないということへのルサンチマンを社会に投影したって仕方ないよ、って話だったと思う。女中心社会と男中心社会の両極に分かりやすく振れながら、それで変わる部>>続きを読む
北欧スウェーデンの冬、音のない寒々しい雪景色と昼と夜の時間の境目があまりないような不思議な季節が、長い時を生きてきたヴァンパイアの生や孤独とリンクして、観進めていくほどに時間感覚が失われていく不思議な>>続きを読む