にく

ノマドランドのにくのレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
3.1
C・ジャオ『ノマドランド』(20)。役者F・マクドーマンドには敬服するも、『スリー・ビルボード』に引き続きその主演作が「白人」慰撫映画になっているのが気にかかる。ノマドとは言い条、彼らは車上生活を自ら選び、孤独でこそあれ大自然の中での生活を謳歌している、要は遅れてきたヒッピーである。
 彼ら選択的季節労働者=車上生活者にとって、Amazonに代表される大企業は、安定した工場労働を定期的に提供してくれる庇護者であり、彼らを搾取する悪としては描かれない。また、監督が中国籍であるにも拘わらず、本作には「白人」しか登場しない。果たしてその様な世界における「自由」とは何なのか。
 いや、彼らというよりは「彼女ら=アマゾネス」というべきか。白人女性ノマドたちの車上生活を蝶番にして大自然と大工場を共に「大風景」として提示する監督の手つきの危うさよ。それは状況が既にそうなっていることへの諦念で、Amazonをよもや「崇高」の名の下に称えたい訳ではないのかもしれないが。
 アジア系の女性は出るには出ていましたね。
 ハウスではなくホーム。モノに対する所有欲ではなく(ヴァンが象徴する様な)モノへの思い入れ、モノが喚起する記憶、モノとの共生。いくらでも流行りの言葉で語れそうな映画だけれど、消費社会に搾取されながら消費生活を続ける「白人」の映画という意味では、ロメロの『ゾンビ』に近いかもしれない。
にく

にく