モミジ

ノマドランドのモミジのレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
3.8
「故郷が消えた主人公がノマドになって色々な人と出会うことで故郷(ホーム)ができる(だからホームレスではなくハウスレス)」…って感じのノマド讃美なストーリーだと思ってたんですけど、実際は違いましたね

主人公のホームは自車だけで、それ以外にホームはない、自分からホームを作るのを避けていると言ってもいいくらい。どんな相手でも間に壁を作って接しているように感じました
否応なしにノマドになったのに、ノマドを辞められる機会があって、それがどんな好条件でも毎回異常に拒否していたんですよね
最初は「迷惑になるから」が理由だと思ったんですけど、どうやらそうではないみたい。そもそもノマドを続けること自体が目的っぽいですね
あと、それに伴う「一人の時間の孤独感」を描くことにも力入れてるように見えました

それはどうしてかと考えようとすると、そもそもこの映画は主人公の心理描写が(ほぼ)無く、劇中一つ一つの情報を拾って推察しなくてはいけないのでそれがまた難しい(初見じゃほぼ無理!)
映画の構成としては「ノマド仲間たちの素性や考えが明らかになる→一通り明らかになった後に、主人公の素性がやっと仄めかされる」と徐々に真相に触れていくような感覚ですね
・未亡人
・代理教師をするほど頭脳明晰(なのにノマド)
・現実は衰えるが詩の中では永遠という価値観
・夫の生きた証を残したい
・洞察に優れていて人の感情に敏感 等々

色々考えると、夫のこと忘れたくないから、定住地(ホーム)を作って夫を捨てるような事をしたくなかったから、自ら進んでノマドをしていたのかなと思います。孤独な男だったので自分が忘れたら存在すら無かったことになってしまうと。主人公にとってはホームは廃町だけだったんですね、だから誰の誘いにも乗らずにノマドを続けた
ノマドにさよならは無いから、ノマドである限り夫は消えない、ラストシーンはノマドとして一生を終える事を決意したシーンだとも取れそうですね

ここまで長々と垂れてアレですけど、この映画の主題は主人公(フィクション)を通して描かれるノンフィクションのノマドの生活なので、へーこんな文化あるんだってテンションで見るのが正しいと思います。ノマドの解説は町山さんの映画評が完璧だったのでそれ読むとわかりやすいです
モミジ

モミジ