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ノマドランドのcinecoroのレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
4.7
お金を出して目尻の皺を観に行きたいNo.1女優、フランシス・マクドーマンド。ファーゴ、スリービルボードときて私にとって人生の大切な映画をこの人が支えている気がして嬉しい。
自由への希求がロマンを伴う形で描かれる様なロードムービーが余り得意ではないのだけど、本作はロードムービーの様な気楽さはなく、資本主義の犠牲になった彼らが生きる為にハウスを手放し、季節労働に身を投じる実際の生活を、それでも悲壮感なくたくましく追っているところが観ているこちらも切実な気持ちになる。もちろん壮大な西部の風景がもたらす視覚的ショックも相当な物で、朝日が昇る前の独特の空気が大陸を照らす様や、鳥の囀りを聴いて生きている喜びを感じることも出来る。

ノマド以前のファーンを知る知人、家族からは"転落した"と思われている彼女の生き方はしかし彼女の犠牲の後の選択であったと知る場面がいくつかあって、ノマドとなった後も選択するシーンが出てくる。
安住の安らぎを捨てて彼女が旅を続ける理由は、バッドランズの岩山のシーンや、スワンキーからの動画を観ると身体に浸透するようにすっとわかる。2回観てエンドクレジットの衝撃は分かっているはずなのに2回目の彼らの名前がスクリーンに映るのを見て涙が出た。今日も彼の地であの人達は旅をして出会いと別れを繰り返し、息づいているのだろう。
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