オスカーと相性抜群、トロント国際映画祭の観客賞受賞作。
第93回アカデミー賞作品賞最有力と目される本作だが、映画としては派手さのない、いかにも批評家受けするであろう出来に仕上がっている。
中学生の頃から毎年10年以上アカデミー賞の予想をしているが、作品規模としての弱さはあるものの、このまま作品賞を受賞する可能性は高い。
ライバルはミナリとシカゴ7裁判といったところだろうか。
ある媒体ではフランシスマクドーマンドのキャリアベストとの声も聞かれたが、果たしてそうだろうか。もちろん超超実力派で大好きな女優ではあるが、ベストかどうかは疑問。
ファーゴ、スリービルボードといった真逆とも言える役柄で2度オスカーを受賞している彼女だが、本作は丁度真ん中あたりに位置する役柄だろうか。
メリルストリープが3度オスカーを受賞しているなら(主2助1)フランシスマクドーマンドも3つ目を貰うに値する女優だ。
ただ、今年の主演女優賞は大混戦で前哨戦の重要3賞の受賞者はバラバラ。しかもマクドーマンドは1つも獲れずという波乱。
だからといって彼女の受賞がゼロになったわけではないほど混戦なのだ。
今年最も面白いカテゴリーにぜひ注目してもらいたい。
一方で監督のクロエジャオは安全圏に入ったか。重要な組合賞も受賞し、後はスピーチを考えるだけ。
現代のノマドという点から描いている本作だが、この現状はまだまだ続いていくことだろう。ホームレスが悪いという描き方はしない。ハウスレスという言葉がやはり刺さる。
60歳過ぎても働く時代。
地球の素晴らしさ、自然の美しさ、世界の広さを見ることなく老いて自分が死んでいくのかと思うとなんとも言えない気分になる。
働いて稼がなければ生きていけない。
ただ、それだけのために生きる人生が充実しているか、していないか。人それぞれの価値観だが、自分は価値を感じない。
せっかくこの広い世界に生まれた命。
コロナが落ち着いたら世界を
この目に焼きつけたい。