TaiRa

ノマドランドのTaiRaのレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
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初監督作から『ザ・ライダー』を経て完成された手法。

現地の人間に当人を演じさせる前2作の手法とは異なり、プロの俳優、しかも熟練の名優を主人公に置く事で、彼女の異物感を描き出すというのは理に適っていて良く出来ている。ノマドの生活・境遇をルポした原作から、社会問題を切り離した脚色。必ずしもケン・ローチの様な映画にする事が正解ではないのでこれはこれで良い。Amazonの描かれ方はアンバランスな気がするが。大自然の中でしがらみに囚われず新しい生き方を再発見する、と言ってしまえば聞こえは良いが、結果としては資本主義経済のシワ寄せを食らっていると言う事なので、あんまり感銘を受けるという感じはしない。その事もジャオは自覚的で、マクドーマンドの他に唯一俳優としてキャスティングされたデヴィッド・ストラザーンが、ノマドの生活をあっさり捨てて息子夫婦の家に住み着いている展開を描いていたりする。実際のノマドの人たちにあの役をやらせないのはつまり、帰れる家があったら帰りたいじゃん、という元も子もない意見を普通に持ってるから。この映画が変にスピリチュアルや哲学に振り切らないのも、そういう「普通」が提示されるからな気もする。
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