ほのか

私というパズルのほのかのレビュー・感想・評価

私というパズル(2020年製作の映画)
4.1
どうして…どうして…がぐるぐるぐるぐるまわる。彼女自身が棘と化し、周りの腫れ物扱いがその鋭利さを磨く。けど、お話はちゃんとストンと落ちる。

たった数分しか生きられなかった愛娘の死を悼み、自分を労ってくれる善意(と、個人的には自分を全く知らない人に雑に扱ってもらうこともひとつの道だと思う)にだけ触れられる環境と自分を赦すこと、ただそれだけが必要だった。
ああ、ほんとに言葉にすると"ただそれだけのこと"だったのにな…。
"ただそれだけ"に辿り着くまでに全てのものを責めて、敵だと攻撃して、何も分かってくれないと突き放して、たくさんたくさん拒絶した。虚無葛藤自責他責が負のループを作る。
私は自分自身の経験ないし、近しい人にリアルタイムで寄り添った経験もないことやから、軽々しくこうやろ!って言い切れることなんてなにひとつないけれど、死産も流産も特別なことじゃなくて、誰にでも起こり得ることで、だからって誰もが立ち直れることではないって思う。苦しんで絶望の中でもがいて、それでも無理だったり、また望んだり、いま居る大切な人を大切にしたりして、なんとか人の形を保っていくしかないんや、ってどうしたってありきたりやけど、改めてそう思った。


周りの不器用さがとてもじゃないけど見てられない。自分が"周りの人"の立場になった時に上手く立ち回れる気もしないし、触れるもの全てを攻撃する勢いのマーサに対しての接し方なんて観終わった今もわからないけど、それにしてもやることなすこと、今はそれじゃない…ってなってた。しょうがないんかなあ。マーサの歩み寄りないときの、身内だけど自分じゃない他人の限界はあれなんかなあ。夫もなんですが、まあ、特に母、ですよね………。母の、勘違い母っぷり、すごかったな………。




ヴァネッサカーヴィーがヴェネチアで賞獲った!絶対観なきゃ!って思ってた作品。それだけしか予備知識がなかったから始まって30分、彼女の凄さに圧倒され、そのまま絶望のなかに蹴落とされました。覚悟して絶望に飛び込んでいくのと、予期せぬ展開で蹴落とされるのは天と地ほどの差があるのよ…。それにしてもヴァネッサカーヴィーが終始凄かった。もうこの映画の彼女は、掴みが完ッッッ璧なんやけど、掴んだまま離さない、圧倒的な気迫が最後まで途切れなかった。映画館で観たかったな…。

シャイアラブーフ!?!?髭やし身体大きくなってて全然わからんかった…。フューリーの時のイメージがつよい。

妹役の方の横顔がヴァネッサカーヴィーそっくりですごい。