ぶみ

ニューオーダーのぶみのレビュー・感想・評価

ニューオーダー(2020年製作の映画)
3.5
これは悪夢か、無慈悲な現実か。

ミシェル・フランコ監督、脚本、ネイアン・ゴンザレス・ノルビンド主演によるメキシコ、フランス製作のスリラー。
結婚パーティーが行われる中、暴徒により法と秩序が崩壊していく姿を描く。
主人公となる新婦マリアンをノルビンドが演じているほか、ディエゴ・ボネータ、モニカ・デル・カルメン等が登場。
物語は、冒頭ダイジェスト的に、この後起こるであろう不穏なカットの連続でスタート、序盤はマリアンの幸せの絶頂となる結婚パーティー風景が中心となるが、幸せな映像はそこまでで、緑色のペンキを引き金として、暴徒たちが雪崩れ込んできて以降は、あれよあれよという間にカオスな状況に陥るため、その鮮やかな対比は眼を見張るもの。
そして、そこに描かれるのは、貧富や格差社会、軍隊の腐敗に、体制側の隠蔽体質等々、決して絵空事ではなく、実は今もどこかで起こっているのではないかというものであり、それを直接的な表現は少な目にして、観る側の頭の中に想像させる演出となっている。
クルマ好きの視点からすると、マリアンの愛車であり、途中暴徒から緑色ペンキをかけられるクルマが、日本では走っていない現地仕様の日産・キックスであったのは見逃せないポイント。
一時間半に満たない尺でありながら、本来なら、そんな時間では入り切らないような濃密な内容となっており、綺麗事では済まされない部分までしっかりと描いているため、体調の良い時に観ることをオススメしたいとともに、ニューオーダーとなったところで、結局のところ、何も変わっていないことを如実に示してくる全くもって人ごとではない一作。

地獄へようこそ。
ぶみ

ぶみ