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刑事物語 兄弟の掟のmitakosamaのレビュー・感想・評価

刑事物語 兄弟の掟(1971年製作の映画)
3.3
スカパーにて。ハンガーを振り回さないタイプの刑事物語。

田中邦衛が捜査一家の刑事を演じる。これがある意味熱血漢で時代錯誤なキャラクターだ。71年公開の今作でさえこのキャラクターは封建的だろう。
古い日本家屋に家族と住み一家の大黒柱として働く。年老いた母と妻と、歳の離れた弟。
この弟が当時で言う、いわゆる“新人類”だね。ベトナム等を背景に学生運動も盛んな時代だが、ノンポリでサイケなアートに傾倒する。
この兄弟の、新旧の価値観の衝突がこの物語の大筋だ。

邦衛演じる岩渕警部に、外国人担当の刑事・久保がコンタクトを取る。この久保に加山雄三。
青大将に若大将という組み合わせだが、スかした久保にも岩渕は拒否感を示す。
いわば久保も新しい価値観の側にいるということだ。

外国人の麻薬密輸に関する事件が殺人にも関わっているということで岩渕も捜査に協力。
そして弟はその麻薬組織に近づいて行ってしまい、兄のかつての恋人と関係を持ってしまう因果。

とにかく田中邦衛が凶暴だ。時代が変わっている事に対する苛立にも、焦燥感にも見える。この刑事が怒っているのは“時代”なのだな。この映画の制作者は、70年代というのが日本の家長制度の崩壊の始まりだと解釈したのだろう。

犯人を思い切り射殺するラストは流石に乱暴だと思うが、この映画から時代性というモノを凄い感じ取る事が出来た。
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