たおぱお

犬部!のたおぱおのネタバレレビュー・内容・結末

犬部!(2021年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

アマプラに新しい映画来たのねー?と、予備知識一切なく、動物も出てくる明るい青春映画なのかと思っていたら、実話ベースの、考えさせられるしっかりした映画でした…。

泣きました。けっこうウルウルきます。犬猫好きにはたまらない、お利口なワンちゃん、かわいいにゃんこが出てきます。

でも本筋とは少しそれたところでちょっとひっかかってしまって…そこを記録しておきます。

主人公の颯太は犬猫が大好きな獣医学部の大学生、犬猫の命を守るため殺処分の無い世の中にしたいと、大学で出会った仲間たちとともに、自分たちに出来る範囲で精一杯の保護活動をしています。
その姿勢は本当に素晴らしく、感銘を受けました。

獣医の国家試験を受けるために必修の解剖実習、大学では、保護センターから殺処分する犬を譲り受けて行われていたようです。

獣医は動物の命を守る仕事なのに、動物の命を犠牲にするのはおかしいと主張する颯太、1つの尊い命を犠牲にした事実を背負って医者になるんだと言う友人柴崎や教授の考え方。

颯太の気持ちもとてもよくわかるし、正論だとも思いました。実際に当時アメリカではそういうシステムではなかったらしくそれを理由に颯太は教授に直談判していました。
ちなみに、現在ではその実習は廃止になったようです。

ただなんとなく颯太の極端な言動に違和感を覚えたのも事実。

颯太は特例的に、学校での実習授業に参加しなくてもレポートによって単位を取得することが出来ました。
凄い行動力です。
でもこれって、逆に従来どおり実習授業を受けた人からすると、自分が悪いことをしている気分にならないかなって。間接的に他の人を批判する行動に見えて抵抗を感じました。
そして、自分さえ手を汚さなければ良いのか、あなたが参加しないだけで結局動物たちは他の学生たちの実習の犠牲になってるんだから現実は救えてないと思うんだけど…という居心地の悪さを覚えました。

そこまで命に拘るなら、食肉分野の動物や、化粧品や製薬開発などの動物実験で犠牲になってる動物の命については?なんて、重箱の隅をつつくような気持ちもわいてしまいました。

何て言うのかな、自分は罪を犯しませんし、犯していません!みたいな態度が傲慢に見えて鼻についたのかなぁ?私の器が小さいせいですねwはい。

現実には色々な面で、あなたのその生活だって、何の罪もない動物たちの犠牲の上に成り立ってませんか?と問いかけたくなったというか。

私たちに出来ることは柴崎くんや教授の言うように、命の重みを背負って感謝しながら謙虚に努力していくべきでは?という気持ちになってしまったのかなぁと思います。

もちろん、救える命が1つでも多い方が良いのには変わり無いし、声をあげることも大切なので、颯太の勇気ある行動は素晴らしいのですがね。

ただ、その若い一直線なエネルギーの塊が、後々柴崎を苦しめた原因のひとつにもなったんじゃないかなぁなんて邪推もしてしまったり。

まぁでも、自分のエゴでも偽善でも、何かをより良くしていこうと邁進できるエネルギーは素晴らしいし、現実に世の中を変えていくのはこういう人の力なんでしょうね。

ヴィーガンにはなれない、肉食大好きな私が、人間が動物を利用するのは反対だ!とは言い切れないなぁと罪悪感を感じてしまったことが、私の中の屁理屈オバケが顔を出した原因かもしれません。

世の中にはまだまだ理不尽に犠牲になっている動物たちの命があって、少しでもその数を減らしていこうと言う気持ちには私も本当に賛成するところではあります。
たおぱお

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