かくがね

海の上のピアニスト 4Kデジタル修復版のかくがねのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

音楽の楽しさみたいなものが詰まっていて、それだけでも最高だなと思っていましたが、船の上で生まれ船の上で生きてきたために、書類上は存在していない1900が確かにそこにいた軌跡と、その生き様に掴まれました。

無限に広がり終わりが見えない陸ではなく、人も夢も限りがあるヴァージニア号と運命を共にする決断。
それは悲しいものでしたが、彼にとってのピアノや音楽も彼の生き方そのものであり、陸では生きていけないのだと思いました。
レコードを破壊して世界に届かないようにしたのも、そういったことから来ているのだと思いました。
それでも自分としては、無限の選択肢の数だけ面白いことがあると思うし、1900には迷った時に導となってくれるマックスという親友もいたのだから、1度陸に飛び込んで生きてほしかったとも思ってしまいました。

音楽が素晴らしいのは勿論ですが、カメラワークやカットの切り方もめちゃくちゃ良かったです。
1900とマックスが初めて出会った、シケで荒れる船内のピアノシーンは、こんなの見たことない!と興奮してしまいました。
ジェリーとのピアノ決闘のシーンも最高。
特に3曲目の演出ヤバすぎた…。

幼少期を除き、1900との思い出を近くで見続けたマックスの視点から語る回想録形式で進む展開と、感情を表情から読み取らせてくれないティム・ロスの演技によって、ラストで1900が感情を爆発させるシーンの重みがより一層増していたと思います。
1900を世界に繋げて存在させ続けてくれるのが、彼の生き様と異なるレコードではなく、唯一存在を知っている親友のマックスと彼の音楽になるというのも、切ないけれど美しいなと思いました。
かくがね

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