ツクヨミ

海の上のピアニスト 4Kデジタル修復版のツクヨミのレビュー・感想・評価

4.9
船から一歩も出ず人生を終えた男の物語、ノスタルジーと純粋すぎた愛を見事な演出と編集で見せるトルナトーレに感服。
ジュゼッペ・トルナトーレ監督作品。"午前十時の映画祭"にて鑑賞、トルナトーレの代表作の一つとしてわりと有名な本作を見に行ってみた。
まずオープニング、絶妙な光源で階段に佇む男を見せるファーストショットにおっとなり、"ゴッドファーザーpartⅡ"のオープニングよろしく船がニューヨークに入港する場面をダイナミックに映し出す見せ方にエモーショナルが爆発しすでに泣きそうになってしまう。もちろんモリコーネのスコアが素晴らしいのもあるが、モノローグの絶妙な表現と人々の表情を次々切り取るカッティングのセンスにも震えまくりな始まりだ。
そしてそんなスタートから、主人公である1900が揺籠に入った状態で船内にて拾われるところに繋がる。船で捨てられ死ぬまで船内で過ごした数奇な男の人生を綴っていく物語、それも語り手はあくまでも1900の親友となるトランペット吹きの男であり、現代のトランペット吹き男パートと過去の1900パートの緩やかなクロスカッティングで語られる語り口もまた良い。流れるような編集の妙で両パートがうまいこと接続するような見せ方、ノスタルジーとサクセスストーリーが交互に語られるトルナトーレの手腕にすっかり魅せられた。
あとなんといっても中盤での1900の初恋シークエンスが美しすぎエモすぎ問題、1900が即興でプレイするが人を見て特性を元にプレイしている前振りからの一目惚れ→センチメンタルなナンバーが即興で弾かれる流れが素晴らしすぎた。1900が弾いているショットからゆっくりと窓へズームすると窓の向こうからゆっくり近づいてくる女性、次第に彼女が1900に気づきゆっくりと窓越しに見つめ合うカッティングになる。もはやトルナトーレ史上最も美しいショットと言っても過言ではない彼女のクローズアップに泣いてしまう、これまたモリコーネのスコアの素晴らしさもあるしシンプルで繊細なトルナトーレの恋愛描写に感服してしまった。
いやしかし今回のカッティングは本当に素晴らしかった、オープニングの流れるような顔→顔の見せ方しかり、1900が弾いているシークエンスでの素早すぎる手元と波のディゾルブ、1900とトランペット吹き男が揺れる船内でピアノと遊びまくる揺れる撮影とかいろんな遊び編集に痺れまくり。そしていつのまにか年が経っている時間経過を1900が少年になって見つめているカッティングで見せたりと"ニューシネマパラダイス"しかり相変わらずうまいトルナトーレの演出手腕だと感じた。
クロスカッティングで語られるノスタルジーと繊細な愛の物語がやっぱりトルナトーレっぽい語り口だし、全体的にそうはならんやろなファンタジックな表現とかも面白い傑作に感じた。モリコーネのスコアは正直100点満点!、最高の映像と音楽でもはやストーリー追ってなくても至福でエモーショナルな体験で最高。間違いなく"ニューシネマパラダイス"と並ぶトルナトーレの代表作だろう。
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