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空に住むのTheylivebynightのレビュー・感想・評価

空に住む(2020年製作の映画)
3.9
傑出した才能の最後の長編。不意に永瀬正敏が現れ夜の港にただならぬ気配が急激に漂うが、それまでが長い。落ち着かないタワマンだとしても、あまりに落ち着かない映像と音が長くて、退屈が避けられなかった。出版社をあんなに対比的な設定にしたのは、タワマンを徹底して描くと決めたからだと理解したつもりではいたが、とにかく音が不満。急に電車の音は聴こえてきたり、わかりやすすぎる。

柔らかな能面はよかった多部未華子に、もう少し編集者としての奥行きが欲しかったけれど、岸井ゆきのをはじめ、役者は、みな素晴らしかった。LDHの匂いは、何も言うまい。

きっと、この映画の良さを全的に感知できていない自分には見えていないものがある。青山真治が同時代にいた幸福を噛み締め、繰り返し観なければ。猫の死で多部未華子が涙を流すことはわかりやすく予想できるが、それでも猫の死ほど悲しいものはない。
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