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ベイビー・ブローカーのよどるふのレビュー・感想・評価

ベイビー・ブローカー(2022年製作の映画)
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自分は常々、“洗車機で車が洗われているのを車中で待っている画”って映画として映えるんじゃないかと思っていて、その思いは深田晃司監督の『よこがお』を観たときに叶えられたのだけれど、是枝裕和監督による本作も印象的な洗車機シーンのある映画だった。

冒頭で傘を持たず雨に打たれる女性は、後のシーンで「雨が自分の罪を洗い流してくれると思っていた」と語る。それだけならただの紋切り型なセリフなのだが、そのさらに後に用意された洗車機のシーンを輝かしく見せるのに一役買っている。本作の良さが溢れている瞬間だ。

疑似家族を形成した主人公一行は、警察に呼び止められり、病院で診察を受けたりする際、自分たちが不自然な集まりだと思われないよう、嘘の“設定”を状況に応じて使い分けていく。“家族”のパブリックイメージをより強固に思い知らされることになる作りが上手い作品。

主人公サイドの人物たちは「どうしても社会(法律)と対峙さぜるを得ない」ことをやっているのだが、根本にあるのは善意である。法の代理人たる刑事たちも人間味のあるように描かれていて、見ていて不安になることはないが、考え方の相対化はされているので見応えはある。
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