そまたま

ベイビー・ブローカーのそまたまのレビュー・感想・評価

ベイビー・ブローカー(2022年製作の映画)
4.2
是枝監督の願いが詰まった映画。

1回目観た時は正直物足りなさを感じた。
それは是枝×韓国フルキャスト→パラサイトの様な、社会の闇を糾弾するような刺激的な展開を望んでいたからなんだと思う。

しかし、初回の鑑賞後に是枝監督のインタビューを観て、そもそものこの映画の出発点は、社会へのアンチテーゼを提示することではなく、養護施設に生まれた子どもたちや、社会の片隅で不遇に暮らしている人達に対し、どんな不幸な境遇であっても、その命は肯定されていいんだという、ある種の是枝監督の願いが前提にあるんだと気付かされた。

冒頭、ソヨンが土砂降りの中坂道を登り、それに対して雨が坂を下って流れていく様子はパラサイトを彷彿とさせる。
あの物語では主人公達は決して幸福な結末には至らず、社会によって不幸にされたままだ。
ベイビーブローカーもそういった結末にすることはいくらでも出来たであろうが、是枝監督は1人の子供を、本当の親も含めた複数の大人達で育てていく、新しい家族の在り方を提示して終わる。
万引き家族を経た是枝監督だからこそ出来る、社会に対する問いの提示が、最後のシーンに凝縮されているように思えた。
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