本当によかった。いい映画でした。
ただ、私は是枝監督の一部作品が好きすぎる傾向があり、一つの映画として冷静にジャッジできているかはわかりません。
良かった点
・脚本
少し万引き家族を思わせる擬似家族的な話だが、舞台が韓国ということもあり、全く別の作品として見れた。哀しさを讃えながら、愛おしく描かれる家族は、ずっと見ていたかった。
・音楽
上品でそれでいてムードも作っていて、本当に心地よかったです。
・演出
ソヨンの大事な顔を影にする演出だが、私は、あれは是枝監督の、この家族、そして登場人物への眼差し、そして作品全体を包む優しさのように感じた。ソヨンの顔を、明るくして観客に詳らかに見せることも簡単にできたはずだが、あえてそれはせず、観客の想像に委ねた。見る必要のないものもあるんだよ、そう作品から語りかけられているように私は感じた。ソヨンの列車での顔や、夜のベッドでの顔は、きっと凄まじい何かであるはずなのだが、それを見ようとすることは、人に安直な解釈を与え、それ自体の価値を貶めることにもなる。そして、その役の何かや、作品に漂う何かを損なう。そう監督は考えたのだと思う。私は、その判断は大いに正しかったと思うし、それによりこの作品世界は、途方もない広がりを獲得したと感じている。
悪かった点
・ラストが少し唐突に感じた。もう30分でも長くして、彼らの心の機微を丁寧に描いてほしかった。
全体的には大満足なのですが、贔屓目に見ている可能性もあります。
