チッコーネ

妖婆 死棺の呪いのチッコーネのレビュー・感想・評価

妖婆 死棺の呪い(1967年製作の映画)
3.7
祈祷3日目のシーンが素晴らしい。
ドワーフを含むエキストラたちの不気味な動きもさることながら、原題ともなっている『ヴィイ』の特殊メイクが素晴らしい出来で、目が丸くなった。
前半は登場人物の背丈に合わせたバストアップのカメラワークが多く、画面に圧迫感が漂っているが、祈祷場面では回転やロングショットを効果的に活用して、セット全体をお化け屋敷へ変えてしまう。
東欧の才気漲る、立派なダークファンタジーだ。

「なぜ老婆が美少女に変わるのか?」という点は疑問のままだが、原作はゴーゴリの高名な怪奇譚。
実は貪婪なニンフォマニアのメタファーなのかもしれない。

田舎の村と動物が多数登場する牧歌的な画面も特徴のひとつ。
民謡調の音楽、そして村人たちの和声が効いた鼻歌も楽しい。
しかし何より、主演のレオニード・クラヴレフが、とてつもなくチャーミング!
隙のあるハンサムな若熊ぶりで、瀕死の場面でも、彼の演技には深刻な恐怖や絶望が見えてこない。
コメディ演出の力によるものかもしれないが、映画史に登場する腕白で、やや頭の弱い好漢の魅力を集約したような存在感である。
彼のおかげで鑑賞がすこぶる楽しかった。