mさん

へんしんっ!のmさんのネタバレレビュー・内容・結末

へんしんっ!(2020年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

面白かった
障害者という存在をすごく身近に感じることができたし、僕らと当たり前だけど一緒で何も変わらない。喜怒哀楽があるし、不器用である。そういうひいき目や哀れみの視点が一切なかったのがいい。一番の理由はこれを作った監督の人自体が障害を持つ人間だったからだろう。本当にこの人の編集された映像を見ると当たり前のように健常者と障害者が手を取り合って、自然にそこにいるように感じられる。ドキュメンタリーを作る人間はどこか自分の物差しや、自分とは違う対象をインタビューするので、客観的に引きすぎてしまう部分があるが、今回は他の障害を持つ方への他者ではありつつも、障害者という共通の部分があり、対象を引いた目線で見ながらも、自分自身とかさなる部分があって入り込んでいる部分があって、ドキュメンタリーではとても理想的な関係である気がした。

ただそこで語られていることにあまり目新しさはなく、真実で自然ではあるが、そうだったのかと衝撃を受けることはなかった。

またダンスに彼自身が参加する展開も良かったが、もう少したっぷりと見せて欲しかった。動きによって説得力が増したのは良かったが、もう少しそこを丁寧に描き、そこから彼がどう変わったのかが知りたかった。彼がもっと主体的に他の人と交わろうとしていく変身がうまく伝わってこなかった。ラストの学校での身体パフォーマンスも他の彼が主体ではなく巻き込まれているような印象をうけてしまい、基本的に受け身である姿勢が最後まで変わらないと思ってしまった。主体的にならなければいけないわけでもないが、映画というのであればキャラクターが主体的に動いて欲しいと思ってしまう。ドキュメンタリー映像と言われたら納得する。

自分が全てを決めることは嫌だ。という石田くん。こうだろうと自分のアイデアを使ってしまうスタッフ。そのギクシャクとした感じが言葉でしか伝わってこなくて残念。もっと石田くんとスタッフとのやりとりも聞きたかった。最後に私はどこまでもついていくというスタッフの言葉が若干急に感じてしまった。

1番印象に残ったシーンは
ジャレオ先生とのダンスである。どのように石田くんの身体に指を這わせていくのか。体に触れていくのか。その全ての動作に目を離すことができなかった。なぜか。僕たちは身体障害者に触れることを怖いと思ってしまうからだ。曲がっている腕に少しでも触れてしまったら、痛いと感じさせてしまうかもしれない。そんな怖さがあるため、私たちは自らの身体と勝手が違う身体を見ることすらはばかられる。しかし、ジャレオ先生はそう言った僕らが抱いてしまう恐怖を最も簡単に飛び越えて身体を重ねていく。指の中をすいすいと進んでいく。障害者と健常者のバリアが最も簡単に破られていた瞬間を見て、とても驚いた。(どちらの側がバリアを破ったのかという議論は置いておくとして)




私はそんなジャレオ先生を凄い人だと思った。
mさん

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