MIDORI

シングルマンのMIDORIのレビュー・感想・評価

シングルマン(2009年製作の映画)
5.0
「今日自殺する」と決めたゲイの大学教授のたった一日のストーリー。「死」がテーマとは思えぬほど、生きることへの強い意志も感じられて、改めて生きている時間の尊さを感じられます。

大学教授であるジョージは恋人だったジムを交通事故で亡くし、生きる意味を見出せなくなっています。そして、今日自殺すると決めて、死ぬ準備を着々と進めていきます。

「今日で自分は死ぬんだ」と決めると、今まで見てきた同じ景色や音がいつもと違って見えたり、人の温かさに触れたり。何か勘づいた大学生のケニーがその日はやたらジョージに絡んでくる。ゲイになる前に結婚していた元妻との気兼ねなく楽しめる関係。

死ぬと決めた日に起こる濃厚な人生のひとときが一日に凝縮されていて、トム・フォードが元来持っている美的センスが素晴らしく、映像や音楽、映画の流れるテンポまでも全てが美しく、完全に映画の世界観に引きずり込まれました。

愛の持つ力は人生の絶頂にもどん底にもなり、誰かにだけ起きるのではなく、誰にでも起こることだからこそ、愛する人と過ごす時間は1秒でも1分でも大切にすべきなのだと感じる映画です。

世界観作りに定評のある、海外ドラマ「マッドメン」のスタッフが協力しているだけあって、60年代の風合いが見事だと思いました。

この映画を初めて見たのは高校生のときで「なんて美しい映画なのだろうか」と思った、あの日の気持ちは今でも忘れられないです。その後、何度も見ていますが何度見ても大好きな映画です。好き嫌いが分かれる映画だとは思いますが、刺さる人には胸の奥まで突き刺さる映画だと思うのでオススメです。
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