このレビューはネタバレを含みます
人間はなんて愚かな生き物なのか。。。
愚かであると同時に尊い生き物である。
今のコロナのこの状況と戦時中、起きている状況は異なるけれど人の心の動きは似ているのかもしれない。
戦争を経験していないので簡単に比較はできないし、常に恐怖を感じて心休まる時がないのは戦時中のほうがキツイのかもしれない。。いや、キツいという言葉では軽すぎるのかもしれない。でも、自由に動けなかったり、何かに恐れを持っているという点では今と共通しているのではないかと思う。
昨年、ドラマを観たけれど、映画では新たなシーンもあり、違う視点から見ることができた。
この作品は国籍や年齢関係なく観るべきだと思う。
公開日が8/6である意味。
戦争は絶対に忘れてはいけない出来事。
そして、起きてはならない出来事。
だけど、世界のどこかでいまだに起きている。
国の為に研究を
国の為に自分のできることを
国の為に戦地で
そして未来を…
自分自身が化学の分野で研究していたこともあって、修の気持ちが分かるところがあった。研究する人は、テーマが面白いとかそういう理由もあると思うけれど、何かしら役に立つと思ってやっている人が多いと個人的には思う。
当時の原爆開発に関わることにはそれぞれ葛藤があったに違いない。自分達がやっていることが正しいと信じてやることしかできなかったのかもしれない。でも原爆投下後の広島を見て、自分達が本当に正しかったのか、自問自答を繰り返す。
家の取り壊しも個人の思いなどは考慮されず、国が決めたことに従うしかできない。
いまそんなことがあったら絶望しかないかもしれない。でも戦時中はよくあったことなんだろうな。。。
戦地へ行こうとした学生を引き戻して、生きろと言った教授。あの当時そう言えた大人がどれほどいたのだろうか…
『まんが悪かった』
この言葉どれくらいの方が理解できるのかな…
『運が悪かった』という意味。運がいいときにはあまり使わず、悪いときによく使う言葉な気がする。
運が悪かっただけ…そんな言葉で人の死を片付けていいはずがないけれど、この時はそう言い聞かせるしかなかったんだろう。。骨壷を作り続けなければならない陶器屋さん。どんな想いだっただろう…
周りの同志達が命をかけて、戦って、散っていく姿を見て、自分が生きていることに疑問を感じ、死ぬことへの恐怖を抱えて、どれだけ苦しい想いをしたのだろうか。
若くしてそんなことを考えなければならなかった人達。
その想いを三浦春馬さん演じる裕之は全力で表現していたと思う。
家族の元では努めて明るく振る舞って、戦地のことは一切話さない。
でも、心許せる兄、世津と一緒にいたことで、心が揺らぐのがよくわかる。
再び戦地へ向かうところ、その前までとは違って気持ちを切り替えたように声のトーンも違っていて…敬礼した手が震えていることで、ある意味覚悟をしたというのがわかってすごく苦しかった。見送る家族はもっと苦しかっただろう。手紙の言葉も家族には自分の苦しさとかは出さず、強い覚悟だったんだろうな…と思う。
アインシュタインの言葉。
科学は人を超える。
そうだと思う。
いろんな事故とかでも聞く想定外という言葉。
人間の想定がそこまでの枠だったという、ただそれだけのこと。
人が考えられることを超えてしまうのがこの世界に溢れている、この世界を作っているもののパワーなのかもしれない。
修を演じる柳楽さん。
心優しい兄であり、実験大好きな研究者。
自分の戦いの場は研究室であるということ、開発がうまく行くことで、戦争が終わることを信じて実験に没頭していく姿、自分が作ろうとしていたものがなんだったのかを知ってからの心境の変化。
すごかったです。
世津を演じる有村さん。
ちゃんと未来をみて生きる人。
大人がちゃんと道を示していく必要があるというのはどの時代でも同じ。
世津がいることで、いまだけでなく未来を見る大切さが表現されているんだとおもう。こういう人たちがいたから、いまがあるのだと思わせてくれる。
出演されている俳優さんみなさん素晴らしいと思いました。
福山雅治さんの『彼方で』の歌詞の意味。
守られたからこそ今があって、ここにいる。あぁ、愛とか生きるとかちゃんと考えて感じて生きなければ…
そう思ったら自然と涙がこぼれました。
京丹後の海、綺麗ですね。
最後のシーン、心がギュッてなりました。
そして少し、清々しい気持ちにも。
過去を変えることはできないけれど、未来を変えることはできるはず。そうやって人は行動することができると信じたい。