弟の戦争への狂気、兄の科学への狂気、それぞれの狂気だなと。
お国のために戦ってきますと言った弟、母や家族への未練も感じさせたが、どこか晴れ晴れとした表情もしてたな。
本音はどうやったんやろう。白黒つけられるものではなかったようにも思える。
色んな解釈の仕方ができる。微妙な表情のニュアンスで表現する役者ってすごい。
でもいま考えればおかしいよな。なんの曇りもなく命は惜しくないと言った若者。言わせた国家。
世の中がつくった戦争への狂気。
戦争一色の社会のなかで、戦争が終わってからのことをひとり考えてたセツはすごい。流されない。
おにぎりをむすぶ場面、髪を剃る場面、物言わぬ母の気持ちがにじみ出てた。
言葉は少ないのに表情や仕草が圧倒的に母の心境を語ってた。
息子を戦地に取られる母の気持ちはその人にしかわからないのに、感情移入させてしまう映画って本当にすごいなぁ…と思った。こんな悲しみを生む戦争は絶対あかん。
当たり前やけど、戦争を描いた作品を創ることの意義をとても感じた。
映画を通して当時の悲痛な気持ちを疑似体験できること(といっても当事者の悲しみにはもちろん及ばないけれども)、そこから反戦への気持ちが芽生えること、それが世論につながり戦争を抑制することにもつながる可能性だってあるよな〜と観ながら思った。
文化が果たせる役割って底知れない。
そんな気持ちにさせた制作者はもちろん、役者たち。なかでも田中裕子と三浦春馬のもつ力にはなんか蹴落とされるものがあった。圧倒された。