ほのか

シカゴ7裁判のほのかのレビュー・感想・評価

シカゴ7裁判(2020年製作の映画)
4.6
訴えかけるは至極単純で明解なことなのに、それが不都合だからって国に都合のいいところだけを残して後をなかったことにする。権力でねじ伏せようと、理不尽でもへし折ろうとあの手この手で潰しにかかってくる。それが虚しくてやるせなくて涙が止まらなかった。なんでこんなことがまかり通るのだろうか。



配信で観て号泣して、ちゃんと観たい…!と思って映画館で2回目観てきました。観てよかった。
映画が始まった時の勢い、初速がすごくいいなと思う。We'reGoingToCicagoにのせられてそのまま映画に入り込んでしまう。最初の雰囲気がデモへの意気込みの雰囲気と合ってるのがいいんよね。そっから転がる先の未来などまだ誰も知らない。
役やとわかってても、判事の顔、もう2度と見たくない…って思ってしまう…これは賞賛ですので…
エピソードはめちゃくちゃ端折られてるんやな、って思うところもちょいちょい。調べるきっかけになるからまたそれもそれでいい。


役者一覧だけで惚れ惚れとしてしまう。
サシャバロンコーエンは本当に器用だね。エディと向き合ってるとついレミゼの結婚式のシーン思い出してしまう。
最期からその人の人生やその人自身への感情を変えてしまうのは違うな、と思いつつ、アビーホフマンが最期は双極性障害に苦しみ、自殺してしまったというのを見て、伝わる、伝えるということの難しさをすごく痛感してしまった。(この映画上でしか彼を見ていないんですが、)あの人柄やし、言動も万人受けするものではないし、"ちゃんと"伝わりづらいところがあるけど、人一倍考えてる。芯の通った思想を持ってるし、理性もあると思った。
トムヘイデンが"進歩的政治"で人々が思い浮かべるのがアビーなのが我慢ならないと言ったのも理解できる。理解できるけど、そういうところに目くじらを立てて非難するのは、勿体ないね、とも思ってしまう。この場でそんなことをすり合わせる暇も余裕もないのが難しいところなんですが…
アビーが証言台で証言するシーン、だいすきです。「文脈を無視すれば、言葉はすきに解釈できる」は本当にこの裁判、すべてに掛かってくる言葉だ。

トムヘイデンが警察に押さえつけられてるシーンとボビーシールやフレッドハンプトンが公廷やFBIにどんな扱いをされたのかの違いがちゃんと描かれててよかった。あの暴動も、黒人がいたら死人が山ほど出て、それを握り潰されてたんやろうなと思うと身震いするほど恐ろしい。




The whole world is watching!