Monsieurおむすび

サン・セバスチャンへ、ようこそのMonsieurおむすびのレビュー・感想・評価

3.9
#サン・セバスチャンへようこそ

いつものインテリでナルシストで臆病な古典映画大好きおじさん。映画祭で急接近する新鋭監督と妻の浮気に疑心暗鬼で、妙な夢に溺れていくコメディ。
ゴダールにもベルイマンにもブニュエルにもなれなかったし、書いては破り捨てた原稿も数知れないだろうし、撮ることよりも観て、受け取ることの方が得意なのかもだけど、歳を重ねるごとに冴える自虐とペーソス、大人の嗜みを熟知した機知に富んだ会話劇は、先人たちに負けず劣らずの天才の領域。

街のポートレート職人としての手腕も健在で、ストーリーの中で流麗に綴られるサン・セバスチャンの街並みも魅力的。

新鋭監督や商業主義への皮肉と嫌悪、クラシックへのリファレンスを隠そうともしないオマージュというよりパロディ。やり方はともかく、こんなの映画への厚い信仰心なしではできないよ。
いつものウディ・アレン作品ではあったけど、人生の晩年を迎え、ウディ・アレンの愛と映画と人生への問いかけに、何か光明がさしたかのようなラストも感慨深く、口角が上がると共に、これからも撮り続けてほしいと願った。
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