2021年ワースト候補。
なんだけど、その前に一言。
寺田心くんは良かったよ。彼の魅力が詰まっていたし、演技も作品のバランスをとる良い演技だった。
フィルマークスに限らずだけど、とりあえず寺田心をバカにしておけばおもしろいと思ってる勘違いドスベりレビューが多いので先に言っておきます。
おふざけ的レビューや酷評レビューでも、作品と真摯に向き合っているかいないかってあるんですよ。
以下作品感想~
主人公が妖怪たちの世界に迷い込むシーンは、適度な怖さもあり、妖怪のビジュアルも素晴らしい。また寺田心のコミカルな演技で全体的なバランスも取れていて、「これは令和のちびっ子たちのマスターピースになるか!?」と期待したが、あとはダメダメ。
今作のドラマにあたる部分は大きく分類して、主人公の成長譚、人間と妖怪たちに立ちはだかる脅威、妖怪たちの人間に対する思いの3つに分けられる。
さらにここから細分化していくと、人間パートでは主人公の生い立ちと兄弟が互いに抱える思い。妖怪パートでは、妖狐、鬼、ぬらりひょんたちのドラマ、そして今作で起こる事件の謎である。
これだけでも6つある。
この時点で118分の内に全て処理するのは困難なのにさらにそこから枝を増やしまくってどんどん風呂敷が広がっていく。
なのに、各ドラマが相互に全く関係していないのである。
その結果、主軸の物語に対しても唐突でなぜこうなるのかがわからない展開が続き、ラストに向かえば向かうほど映画が破綻していく。
例えば、兄弟愛と成長の物語にするのならば、序盤の日常パートでもっとお互いに対してどのような思いを持っているのか。また、主人公がどんな人物なのかをもっと丁寧に描くべきなのにセリフで投げやりに説明されるだけ。
お父さんの存在も如何様にも活かせると思うのだが、いらない謎要素のためだけにあるだけ。
また、感情がAからBに移り変わるこの"間"がドラマだと思うのだが、ここを丸々端折っているのでただ描いているだけにしか見えない。
それから、悪い意味で命が軽すぎる。仮にも死を扱っているのだからここはちゃんと考えなければいけないのではないか。
あとは妖怪の世界と人間の世界の関係性。当たり前のように主人公の住む街が壊滅レベルでボロボロになっていくのだが、出てくる人間は主人公兄弟のみ。
その辺は人間の住む世界と同じ形をした裏世界とか如何様にもなるけれど、それにしては違和感がある。
倒すよりも助ける。対立よりも共存を。これ自体は良いがそれを描くにはやはり主人公の背景に関するドラマがなさすぎる。
子供向けだからこんなんで良いだろという姿勢がバレバレ。