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シャドウ・イン・クラウドのやのネタバレレビュー・内容・結末

シャドウ・イン・クラウド(2020年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

超弩級エンパワメント系B級エンタメ!

グレムリンはこの映画に必要不可欠であり、ジェンダーテーマや、戦争モノといった本作に盛り込まれたジャンルを架橋するカギである。

なぜならグレムリンはもう1人のギャレットであるから。

グレムリンがあの鞄を最後まで執拗に狙い続けるのは、グレムリンはギャレット(クロエ・グレース・モレッツ)の鏡像だからである。

実際、ギャレットと今作のグレムリンは多くの共通した行動をとる。

・銃座の部品を(意図せず)もぎ取ってしまったり、機体をとにかく破壊する
・飛行中の航空機の外壁にしがみついて縦横無尽に活躍する
・空を飛ぶ

ギャレットが指を折ったのも、鉤爪ぶった切られたグレムリンとお互いに対の存在であることを強調してはいないだろうか。
従って、グレムリンがスプラッター的に男性兵士達を襲うシーンは実際のところ、ギャレット自身による彼らへのリベンジを半ばは写しているようなものだ。それ故そこにはシンプルかつ強いカタルシスがある。零戦にだけ殺させてもこうはならないだろう。

(一方で、グレムリンが赤ん坊を狙う動機としては、次のような説明もできる。
不義の子を母親から取り上げる家父長的な社会や男性性の象徴を、怪物的に寓意したのがグレムリンである、と。
これも一理ある)

まあ際自分は映画館では細かいこと考えずに大ウケしてた人間だけど、ハチャメチャな作品の割に色々解釈してみたくなる余地があるのも魅力かと思う。

フェミ的なところについても少し。
抑圧的で暴力的な男性性は、ギャレットが銃座に閉じ込められたシーンで本当にストレスフルに伝わってきた。
そのストレス分だけアクションでカタルシスをちゃんと感じられたし、DV設定もすんなり繋がった。
クロエの脳内で描かれる、亡霊のような男たちのイメージや、ネオンぽい光、「男性性との対決」という点など所々『ラストナイト・イン・ソーホー』を思い起こすが、海外での公開は今作の方が早いみたい?

ワンシチュエーションっぽいのは予算の制約もうかがわせるが、観ている間は気にならないくらい成立させていたのは、やっぱりクロエ・グレース・モレッツの画力でしょう。いい映画でした。
や