なんか、死を受け入れるまでの過程を見たような気がした。
今までどうにもならなかった人生を、せめて息子の人生だけは自分の意志で良いものにしたいと考える主人公。
それって多くの親が考えることだと思う。
でも実際に選ぼうとすると、これが正解なのか自信が持てなくなる。なぜなら、未来は誰にも分からないし、何より自分の意志だけで決められるものでもないから。
ましてや自分の人生ではなく、息子の人生である。
見ていていいなあと思ったのは、主人公が自分は誰よりも息子のことを知っているとは思うけど、それでもすべてではないと気づくこと。
やがて最初は受けつけなかった周りからの言葉も受け入れられるようになっていく。いつ、何がきっかけかは正直見ていてもよく分からない。敢えて言うとすれば、たくさんの人や、出来事のとの出会いを通じて少しずつ運命を受け入れていったんだろうなということ。
それが正解かどうかは分からないけれど、定められた運命の中で、自分なりに生ききることで、ああこんなふうに生きてこれて良かったと思えること、それが大切なのではというふうに考えた。
とても描写が丁寧な映画。
父子の日々の中で描き出される愛情の細やかさがどれも良い。
心に響くシーンがいくつもある詩のような映画。
