Natsumi

いつかの君にもわかることのNatsumiのネタバレレビュー・内容・結末

いつかの君にもわかること(2020年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

設定とタイトルを見て、
どことなくお涙ちょうだいの
商業的映画かと思っていた
部分もあったけど
実際に見てみたら真逆。

お涙ちょうだいの演出がなくて
大衆ウケを狙う品のなさもなくて。

ただただ、素晴らしい映画でした。
脱帽です。

主人公の父親と
その息子、マイケルの
絆の描き方が丁寧でした。

家は狭いし、お金もないし、
知り合いも少なくて、
日々の物音も少ないけど、
マイケルはそれでも
“うちがいい“。
これは父親の力だったんだと思う。

好きなシーンやセリフは
語り出したらキリがないけど、
あえて言うなら
“車の免許をとったら読んで“の
手紙かな。

車好きの彼が
実際に運転できるようになったら
どうしても贈りたい言葉があったのか。

成人したら読んで、とか
社会に出たら読んで、とか
ベタな区切りもあったんだろうけど、
あえて車の免許を切り取ったところに
果てしない思い入れを感じる。

大きくなったマイケルが開封する
シーンは描かれていないことも
相まってその手紙の中身への
想像がぐんぐん広がって
心が勝手に満たされていく。


最後選ばれた里親は
みんなが頷ける選択だ。

客観的な身分とか
家の広さとか財産とかでは
決して補えないものを
彼女は確かに持っていた。

マイケルが自分の境遇にふと寂しさ
を感じるときがきても、
自分でよかったと思わせてくれる
母親だ。

父親が主人公から
上書きされないのも良い。


人は死んだら、風になる。
だから、話しかけて。
声は聞こえないけど、
心で会話ができる。


寄り添ってくれた街のおばあちゃんの
教訓が父親を通してマイケルに
伝わっていく。
マイケルがそれに支えられて
孤独と闘うところを思い描いて
また泣いた。

もう一度見たい。
Natsumi

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