Junichi

サマーフィルムにのってのJunichiのレビュー・感想・評価

サマーフィルムにのって(2020年製作の映画)
4.4
「礼の吾人に要求するところは、泣く者とともに泣き、喜ぶ者とともに喜ぶことである。」

新渡戸稲造『武士道』
(岩波文庫、矢内原忠雄訳、66頁)

【撮影】8
【演出】9
【脚本】9
【音楽】8
【思想】10+

武士道の本質は【愛】であり
そしてその【愛】は
相手の存在を尊重し同情すること

『時をかける少女』(細田守版)
『君の名は』(新海誠版)
『座頭市』
『サマー・タイムマシーン・ブルース』
『カメラを止めるな』
『映像研には手を出すな』etc.
本作品が
様々な作品から影響を受けたであろうことがよく分かります
『時かけ』の台詞はそのままだったり

とはいえ
オリジナリティが低いからといって
本作品の評価が下がるものでもありません

なぜなら
青春の物語は
普遍的であるゆえに

物語は
ハダシ(伊藤万理華)班による
時代劇映画制作と
花鈴(甲田まひる)班による
キラキラ青春恋愛映画制作
両者の対立的な構造を軸に描かれます

勝手に花鈴をライバル視していたハダシが
夏合宿中のアクシデントから
花鈴班に協力するようになり
映画部部室で背を向けながら編集作業を行う
そして
一緒にキラキラ青春恋愛映画を観て涙する
そして花鈴からの一言
これが本作品最後につながります

本作品最後
賛否両論のようです
観客にとっての劇中劇が劇になった瞬間は
劇中の人にとっては
劇がリアルになったことを意味します

現代においてリアルな時代劇とは何か?
武士道の本質が【愛】 だと理解できれば
本作品最後の演出も理解できるでしょう

最後に
元乃木坂46の伊藤万理華さん
存在感が素晴らしい
ガニ股猫背でお弁当を食べたり
卑屈な笑顔や白目やドンヨリ顔
監督時の「カット」のくせが凄い言い方
そして座頭市の殺陣などなど
本気で俳優になる人なんだと思います

新型コロナ下の2020年
3月から7月にかけて(途中、中断をはさんで)撮影された作品
時代の状況が要請したような作品

新型コロナに奪われた青春を取り戻しに行くためにも
本作品をオススメします
Junichi

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