高橋ヨシキ監督作ということで観たかった映画。『タクシードライバー』みたいな話かと思ったら、確かにニューシネマの風を感じる作品ではありながら、予想外に直球なディストピアものだった。粗さは感じるが、リアリティから少し外された過剰さが楽しかった。
低予算の中わざわざ「アメリカ行き」という展開を入れたのは、真意はともかく、そこにもニューシネマ的な風を感じた。トラヴィスやランボーがベトナム帰りに自分の居場所の喪失を経験するように、『激怒』の主人公も異国から戻ると古巣の変わり様を目の当たりにする。
日本に帰ると「安全安心の街づくり」と言いながら優生思想的な発想をもって人々を排除していくディストピアが広がっている。ただ、スローガンとは裏腹の世界を恐ろしく感じるはずが、悪役が「ザ・悪役」過ぎてあまりそれを実感出来なかった。そこはもう少しリアリティがあると個人的には嬉しかった。