ともぞう

拝啓天皇陛下様のともぞうのレビュー・感想・評価

拝啓天皇陛下様(1963年製作の映画)
3.1
ある男の戦中、戦後を通じた一代記。この時代の映画は過度に反戦を謳うものが多いイメージだが、天皇陛下に敬愛の情を抱く、かと言って右翼的でもないバランスの取れた作品。渥美清と藤山寛美のコメディアン共演もあるが、少しストーリーが散漫だったかな。

〈あらすじ〉
山田正助(渥美清)はもの心もつかぬうち親に死別し世の冷たい風に晒されてきたから、3度3度のオマンマにありつける上、何がしかの俸給までもらえる軍隊は、全く天国に思えた。意地悪な二年兵が、彼が図体がでかく鈍重だからというだけで他の連中よりもビンタの数を多くしようと大したことではなかった。ただ人の好意と情にはからきし弱かった。入営した日に最初に口をきいてくれたからというだけで棟本博(長門裕之)に甘えきったり、意地悪二年兵に仇討してやれと皆にケツを叩かれても、いざ優しい言葉をかけられるとフニャフニャになってしまう始末だった。だが、中隊長の寄せる好意には山正も少々閉口した。営倉に入れられれば一緒につきあうし、出て来れば柿内二等兵(藤山寛美)を先生にして強引に読み書きを習わせる。昭和7年大演習の折、山正は天皇の“実物”を見た。期待は全く裏切られたが、この日から山正は天皇が大好きになった。戦争が終るという噂が巷に流れ出すと、山正は天国から送り出されまいとあわてて「拝啓天皇陛下様」と、たどたどしい手紙を書こうとした。が、それは丁度通り合わせた棟本に発見され、危く不敬罪を免れた。まもなく戦況は激化、満州事変から太平洋戦争へと戦線は拡がり、山正はその度に応召し、勇躍して戦地にむかった。そして終戦、山正にはただ住みにくい娑婆が待っているだけだった。懐しい棟本を訪れ、ヤミ屋をしたり開拓団に入ったりの生活をしていたが、同じ家に住む未亡人に失恋した日から山正は姿を消した。そして再び姿を見せた時、山正は女房になってくれるという女性を連れて来て棟本を喜ばせた。雪の降る朝、「酔漢トラックにはねられ即死」新聞は山正の死を伝えた。棟本はいい知れぬ悲しみに泣いた。
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