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拝啓天皇陛下様のYouichiOnoのレビュー・感想・評価

拝啓天皇陛下様(1963年製作の映画)
4.5
タイトルからして政治メッセージの強い作品かと思ったがそんなことはなく。
むしろ、そうやって身構えた自分自身が恥ずかしくなるような、純朴な男の話だった。
渥美清の代表作、寅さんの原型とも言われているらしいけど、それも納得の、憎めないダメ男。彼のキャラクターを十二分に発揮した良作だと思う。

主人公の山ショウは、赤子という言葉を「セキシ…?」と言ってしまうほどに学がなく、純朴な男。
彼は天皇陛下本人を見た時、素直に彼を慕い、不敬罪も知らずに、天皇へ手紙を書こうとする。
右も左もない、ただあの時代に生きた純粋な男をペーソスたっぷりに描いた悲喜劇。

実際には、手紙を書くシーンは中盤の一シーンであり、主人公の人生には大きな影響を及ぼさない。しかし、そこを拾ってタイトルにつけるセンスは素晴らしいと思った。

基本的な展開は山ショウの人生を細切れに追いかけていく感じ。起承転結なストーリーらしいストーリーはなく、ひたすらに彼がどんな人生を送ったかを語る。山ショウという人間の味わい深さと、解釈の幅のあるラストシーンが印象的だった。
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