こんなことが本当にあったなんて、
信じられない。
台湾の聾学校で実際に起きた性暴力事件。
1人の少年が少女を助けようとしたその告発が、一見平和に見えた学園生活の中に潜む闇をあぶり出してゆく。
どうしようもなく邪悪に見えた暴力の主犯格、ユングァンの独白が胸をえぐる。
彼が100%悪かったら、観ている私たちも少しは救われたのに。
憎むべき相手を求めてしまう自分を嫌悪する彼を、絶望のその先にいるような彼の姿を、
私たちはどう受け止めればいいのか。
彼をあんなふうにしたのは、大人なのだ。
幸せに人を愛せる大人になれたはずの少年を、あんなふうにしたのは教師である1人の大人だ。
そして、それを見て見ぬふりをした何人かの大人なのだ。
自分の欲望で、無垢なる子どもの魂を破壊する。
そんな大人を、私は心底憎む。
何よりも。
少女を助けるために少年がやむを得なく行った行為が、さらなる悲劇を生む暗示に満ちたラストシーン。
自分で抱えきれない悲しみや憎しみを紛らわせるために、暴力が連鎖されていく。
自分だけがつらいんじゃない、と思うために。
でも、そんなことで悲しみや憎しみは絶対に癒されることはない。
1人でも多くの大人が、この問題に向き合わなければならない。
