ゆうゆ

川っぺりムコリッタのゆうゆのレビュー・感想・評価

川っぺりムコリッタ(2021年製作の映画)
4.3

浮遊する金魚、
存在感を放つ白い故人の名残り、
鉄橋の間を結ぶ 壊れた電話たちが繋ぐ
こちらとあちらの世界
あの川っペリは
三途の川にも繋がっているのかな…

ほっこりのなかにひっそり潜む空虚。
短い生を懸命にいきる蝉の鳴き声
それに呼応するかのように
主人公の心は他者によってゆっくりと解され
希望ある方向へと歩を進めだす

日常の小さな幸せの積み重ね
そこには 最近では希薄になりがちな近隣の
他者との 一歩踏み込んだ歩み寄りと
支え合うあたたかさがあり
噛み締め感じるシンプルな喜びは
灰色だった彼の抜け殻のような心に
生への糧として瑞々しく注がれ
同じ日常をこれまでとは違った温度で
やさしく彩ってゆく

あそこに集う人達は それぞれがのんびり
丁寧に暮らしているようで 実は
縁(ゆかり)のある故人に対する苦しみ悲しみ
愛おしさ、それら拭いきれない"死"と向き合う
微笑みを内包していて
だからこそ
彷徨う主人公に寄り添えている気がした

あっちの世界と隣り合わせのようだった
主人公が齧る 瑞々しいトマトの赤。
"食べる"ことが 彼の干からびた心に
ふたたび生命を注いでいった


松山ケンイチはときに引き締まっていたり
ぶよぶよだったり、見る度に印象の変わる
俳優さんだけど 今回の年齢不詳な
干からびたモッサリ感が絶妙にツボ♡
浴槽での汗の滴りとも涙にも見える描写が素敵。
そしてイカの塩辛とナメクジのヌメリは
島田(ムロ)の悲しみ色の憎めないクセの強さに
どこか共通している気がした笑

この作品を観ててどこか無性に春原さん味を
感じたし、『NOPE』ぽい描写におぉーと
なったけど こっちの方が感動的ですき。




2022-254-65
ゆうゆ

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