あんじょーら

林檎とポラロイドのあんじょーらのレビュー・感想・評価

林檎とポラロイド(2020年製作の映画)
2.9
映画好きな友人に教えてもらった作品です。あの、ヨルゴス・ランティモス監督の助監督を務めていた方の初監督作品みたいです、詳しい事が分かりませんけれど。なにしろギリシャの監督なんで。


ある日突然、記憶喪失に陥る奇病が蔓延した世界で、車に乗っていた人が車から降りてそのまま乗り捨てて後ろに車が詰まっていても、自分が誰で何をしていたかが分からない、というような突発的な状況が映し出されつつ、男は花束を買いバスに乗り込むのですが・・・というのが冒頭です。


非常に面白い世界観で、なかなか奇抜です。確かに、もし、飛沫感染を起こすウイルス疾患に、突発的な記憶を失わせる要素があったら、と思うと、世界は大混乱に陥ると思います。そんな世界で、その男は自分が林檎を好きな事だけは分かっているのですが、それ以外の全てが思い出せず、しかも親族からの連絡が無い中で、とあるプログラムに参加するのですが、この作品を観終わった後で、これは結構解釈が分かれる作品だと思いました。


脚本も悪くないのですが、私はカメラの構図とピントの合い方と、色合い、それもコントラストの効いた場面でのショットが非常に印象に残りました。


それと、ある病院を歩く主人公の歩み方だけで、この人がどんな人なのかを分からせる演出も良かったです。ポラロイドを使った、というのと、新しい自分、という概念も面白かった。記憶の継続性だけが唯一の頼りという非常に危うげな存在なんだと改めて感じますし。


本当に結末についての解釈はいろいろ意見が分かれそうですが、初監督作品としては結構いいのでは?と思いました。割合、読める展開ではあるんですけれど。


それと、主演のアリス・セルヴェタリスの表情、演技、佇まいが良かったです。誰もが感情移入させやすい感じになってていいです。


記憶、脳、存在について興味のある方にオススメ致します。