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ある職場/些細なこだわりのyoshikoのネタバレレビュー・内容・結末

ある職場/些細なこだわり(2020年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

ホテル職場でおきたセクハラ事件の被害者を元気づけようと、同僚たちが小旅行をする。しかし、被害者の個人情報をネット上でさらし、誹謗中傷している人物が同僚の中にいるらしいとわかり、互いに疑心暗鬼になる。

一番印象に残ったのは、被害者をかばい続ける年長の女性と、経営幹部の女性とのやり取り。生々しく、女性が男性中心の組織で生き残るために何を犠牲にするかを抉り出す。根本的な問題は組織がボーイズクラブで成り立っていることなのに、周囲の男性たちは2人の言い合いを眺めているだけだ。

男性たちの被害者に向ける言葉も二次加害そのものだ。彼女がネットでの誹謗中傷に反論したことでますます炎上し、ホテルの経営に影響があったのだから、彼女にも責任があるとぐさぐさと刃を向ける。それらの攻撃に対して彼女を守ろうとする人はほとんどいない。なのに、二度目の小旅行にも彼女は参加する。なぜそんなことができるのかわからない。そういう腑に落ちなさも、もしかするとこの映画が狙っているものなのかもしれない。

被害者が沈黙させられるのは「よくあること」だ。それを前提に物語を作っていいのだろうか。監督は、俳優には大まかな設定を指示するだけであとは俳優たちに委ねながら共同で脚本を作ったとのことで、それがドキュメンタリー的な説得力や、登場人物のザラザラ感、居心地の悪さを作り出すのに成功している。セクハラについて相当調査してから制作していることもわかる。

一つ気になるのは、実際に性暴力や二次被害を受けた経験がある人が、この映画を見てどのように感じるかということ。彼らのやり取りにさらされるとおそらく体調を悪くするだろうと思うので、被害から回復しきってない人は見ない方がいいとは思うのですが…。
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