まぬままおま

兎たちの暴走のまぬままおまのレビュー・感想・評価

兎たちの暴走(2020年製作の映画)
2.0
物語が暴走している。

地方、貧困、犯罪、ジェンダーといったトピックを絡ませればよいとしか考えてない作品。配給会社で察するべきだった。おしゃれな雰囲気と現代の批評性ーけれどそんな批評性はペラペラすぎるーに騙されてはいけない。

四川省の田舎町・攀枝花市に住む17歳の高校生・シュイ。彼女の母親・チューは彼女を置いて去った舞台俳優なのだが、ふとしたきっかけで再び戻ってきて…
おそらくシュイと母が、母の借金取りから逃げ出すために同級生を誘拐しようとする犯罪劇ではある。ファーストシーンで犯罪の結末が描かれるため、そこに至るまでどんなことが起こるのか気になりながらみるのだが、シュイの学校生活を描く謎の群像劇があり、シュイと親友のジンとユエユエの友情物語に脱線してしまう。そして再び犯罪劇に戻ることなく、彼女らの家族を取り巻く劇に変わっていき、最後にファーストシーンに繋がることもなく、シュイのクローズアップで終わる。困惑だし、何をみせられたのかよくわからない。おまけに中国政府の物語の基になった実際の事件に対する「ありがたい言葉」が垂れ流されて後味が最悪だ。

出稼ぎ労働者で繁栄する都市は反対の、地方と残された子どもたちを描いたのは面白し、キャスティングもとてもいい。ただそれだけでしかなく、中国映画をみるなら香港ニュー・ウェーブに連なる作品を今後はみたいと思いました。