マツダタケシ

映画大好きポンポさんのマツダタケシのレビュー・感想・評価

映画大好きポンポさん(2021年製作の映画)
5.0
【映画を通して、クリエイティブの原則を教えてくれる】

見やすいし、楽しいし、心地よい!
作り手の解釈や切り口を通してではなく、映画が持っている当たり前の魅力を、ありのまま伝える潔さに心打たれました…。

クリエイティブにおいて、どんな瞬間に、どんな悩みを持ち、どのようにより良い答えを導き出すのか。誰のための作品なのか、その人にどんな感情になって欲しいのか。基本的でありふれた原則。立ち返るべき原点を現してくれている。

印象的なのは、終始観ている側の感情に焦点を当てていること。序盤〜中盤シーンのエンタメ性の高さや、上映時間が90分という点にも、そのこだわりが反映されている。良い意味でありふれたメッセージを伝えるための終盤までに、世界観のなかに引き込んでくれる。

・場面転換の軽やかさ
・伏線回収の軽やかさ
・単調な繰り返しのシーンを成立させる絵力
・単調かつ鼓動のBPMに合わせたBGM
・意味のあるセリフをショーに昇華させる演劇に近い演出
・そのセリフを息をするように吐くことを許されるキャラクターデザイン


個人的に刺さったセリフ、「残すために、切り捨てる」。"delete"ボタンに込められたをドラマに痺れ倒します。幸福は想像の敵だと言い放ち、持たざる者が主人公である点も好みでした。

タイトルがストンと落ちるのも気持ち良かったです。ジーンの映画だけど、ポンポさんのための映画でした。