ユーライ

トータル・リコール 4Kデジタルリマスターのユーライのレビュー・感想・評価

4.0
実存的不安に悩むシュワちゃん、というパブリックイメージ的にどうあっても似合わない姿に90年代の気分を見たかも知れない。バーホーベンのSF的クールさとは無縁のやり過ぎ上等こってりグロ演出も漫画的誇張とすら言える目ン玉飛び出しから人体破壊、奇形、ロボタクシー運転手からホログラム、モニターといった人間の似姿的要素を相次いで画面に登場させることで実存的不安、存在の不確かさというテーマと有機的に結び付いていると言える。端的に過剰さで持って白昼夢的世界観により説得力を与えている。機械だらけの未来世界で一般人として暮らしているとされるシュワちゃんが尽く機械をブッ壊していきながら話を進めていく筋肉礼賛的作劇もバーホーベン演出と合わさってSFらしからぬマッチョさのアンバランス感が何とも言えず爆笑を誘う。「人を殺して捨てゼリフ」も好調に稼働。一方で虐げられる者達への目線は通底しておりラストに青空を見せて解放を描く辺りの誠実なバランス感覚もやはりどこかおかしい。最後に半端に見せずむしろ終わるのは意地の悪さ極まれりだがもう一つ欲しかったのも事実、それを含めた意地の悪さか。
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