TaiRa

タイムのTaiRaのレビュー・感想・評価

タイム(2020年製作の映画)
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オバマが褒めてた。サンダンスでも評価されてたみたいだしオスカーもあるかもね。

20年前、強盗未遂を犯して懲役食らった夫婦。妻は司法取引などもろもろで3年ほどの実刑。夫は禁錮60年。執行猶予も保護観察もなし。不当に重い刑。何故か。黒人だから。アメリカの司法制度の問題と人種差別をベースに敷きつつ、描くのは夫を待ち続ける妻と子供の長い長い「時間」。事件前から事件後のホームビデオを使用しつつ、現在の妻の奮闘を記録して行く。子供たちの成長記録は観ているだけで胸が締め付けられる。その子供たちが現在では立派な青年になっているのも、非常に複雑な感情を呼ぶ。余りにも長い時間が経ってしまった事実と、息子たちが優秀で真っ当に育っている事の感動。前科も付いた片親が6人の息子を育て上げた事実は強い。判事へ連絡を入れても一向に取り合って貰えない母親が、怒りを込めて「成功こそが復讐」と唱える。アメリカにおける黒人たちのメンタリティとしてこれは通底していると思う。差別や侮辱に対し、成功する事しか正攻法の戦い方がない現状。そしてそれをやり遂げようとする姿勢。モノクロの映像は何かが欠けた世界を表し、それが巻き戻って行く事で再出発を表現する。映像の逆回転に泣いた。
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