ツクヨミ

スウィート・シングのツクヨミのレビュー・感想・評価

スウィート・シング(2020年製作の映画)
3.8
苦しい現実社会から逃れたい子どもたち。
母親が家出父親が飲んだくれの両親を持つビリーとニコは貧しくも少し楽しい日々を送っていたが、父親が逮捕された日から彼ら姉弟は自由を夢見る…
アレクサンダー・ロックウェル監督作品。ジム・ジャームッシュ監督と並んでアメリカインディーズのアイコンとして評されるロックウェル監督、たしかに本作はインディーズ風の作風を持つが溢れる情熱が眩しい作品だった。子どもたち主観で見ていく貧しくも楽しい日々が時にキラキラと輝く様が主な要員であるが、苦しい現実社会からの逃避という要素が楽しく遊ぶ子どもたちを際立たせている。
また今作は全編ほぼ白黒映画である。ほぼというのは稀にカラーで映した映像が挿入されるためであるが、このちょい見せカラーの出し方が実に美しくキラキラしていた。主人公ビリーのイマジナリーフレンドであるビリー・ホリデイの妄想シークエンスだったり、ビリーが海に潜ると白黒だったのがカラーになったりと、楽しいシーンや子どもたちにとって感情的にグッドな要素になるとカラーになるという表現がとても魅力的で美しい。子どもたちにとって苦しかったり現実社会を感じさせる日常が全編白黒で撮られているのが更に拍車をかけてカラーを際立たせていた。また監督も言っていたが全編手持ちカメラでの撮影というのも好み。
またバックミュージックとしてビリー・ホリデイのジャズやアメリカンカントリーが流れる選曲もすごく映像にマッチしていて良かった。全体的に苦しい現実が見えるがそんな社会でも楽しく自由に生きようとする子どもたちがキラキラ輝いていた。やっぱり子ども主観の映画っていいなと再確認。
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