ぶみ

マッドマックス:フュリオサのぶみのレビュー・感想・評価

3.5
お前の怒りを解放しろ。

ジョージ・ミラー監督、アニャ・テイラー=ジョイ主演によるオーストラリア、アメリカ製作のアクションで、同監督『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の前日譚。
世界崩壊から45年、バイカー軍団に全てを奪われた主人公が、荒廃した世界と対峙する姿を描く。
本作品に備え、シリーズの前作までは全て鑑賞済み。
主人公となるフュリオサをジョイ、バイカー軍団を仕切るディメンタスをクリス・ヘムズワース、対峙する組織シタデルの指揮官をトム・バークが演じているほか、シタデルの占有者であるイモータン・ジョーを前作の撮影後鬼籍に入ることとなってしまったヒュー・キース・バーンにかわって、ラッキー・ヒュームが登場。
その他、前作に引き続き、ネイサン・ジョーンズ、アンガス・サンプソン、ジョシュ・ヘルマン、ジョン・ハワード等が登場していたのは嬉しい限り。
物語は、これまでシリーズの時系列が語られることはないなか、初めて世界崩壊から45年後という時代設定が明かされたうえで、幼き頃のフュリオサのシーンでスタートするのだが、このフュリオサを演じたアリーラ・ブラウンがジョイの子役としてピッタリの雰囲気であり、ナイスキャスティング。
以降、前作で主人公マックスとともに行動することとなり、シャーリーズ・セロンが演じて抜群のインパクトを誇っていたフュリオサが、いかにして怒りを抱えるようになったかが綴られるのだが、本作品はそこにターゲットを絞っており、結構な時間が割かれていたことから、特に前半はお世辞にもテンポ良いとは言えなかったところ。
中盤以降、前半の遅れを取り戻すかのようにアクションシーンも増えてくるものの、前作と比較してはいけないと思いながら、心のどこかで振り切れた作風を求めていたため、相対的にヒャッハー度は低めであるし、ドラマ要素が強められた仕上がりとなっている。
クルマ好きの視点からすると、ヘムズワース演じるディメンタスが馬車のように複数のバイクを操るという破茶滅茶さはある反面、前作で見られた、トレーラーヘッドをツインエンジンにしたり、トラックに乗用車のキャビンを乗せたりといった、もはやベース車が何かわからないような魔改造が魅力のひとつだったところを、本作品では、様々な武器が取り付けられてはいるものの、クルマそのものはせいぜい超大径タイヤを履かせる程度にとどまっていたのは、これまた残念だったところ。
そんな中、大半のクルマが左ハンドルであったのに対し、フュリオサ等が駆ることとなる大型トレーラーがオーストラリア製作だからどうかは不明だが、右ハンドル仕様であったのは見逃せないポイント。
単体作品として考えると、映像、音響とも文句なしなのだが、『怒りの〜』が、ロードムービー要素も取り入れたエンタメアクション作品として完成形に近い仕上がりであるが故に、ドラマパートを増やしたがためのテンポの悪さやアクションシーンの少なさが目についてしまい、スクリーン案件ではあるものの、何か物足りなさを感じてしまったとともに、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督『デューン 砂の惑星』シリーズのように全体を一つの作品と捉え、『怒りの〜』とセットで考えれば満足いくものとなるのに加え、その『デューン〜』以上に砂の惑星っぼかった一作。

星と共にあれ。
ぶみ

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