MasterYu

私は確信するのMasterYuのレビュー・感想・評価

私は確信する(2018年製作の映画)
3.7
ヒッチコック狂の完全犯罪と物議を醸した未解決事件をベースに作られたという本作。

正直ヒッチコック狂云々というところは、キャッチに使われるほど本作の中で大して触れられていなくて、宣伝の印象操作でしかない。
事件の流れを知っているであろうフランスでは、そこはキッチリと描く必要のない部分なのだと推測されますが、ある意味そういうところもこの事件を反映しているようで、検察やマスコミの仮説に基づく印象操作を見せられているとも言える気がします。

被告の娘が、自分の息子の家庭教師だからという理由で、わざわざ弁護士のデュポンに弁護を依頼しにいったシングルマザーのノラ。
デュポンから莫大な量の通話記録の整理を頼まれたことから、取り憑かれたようにその作業や捜査にのめり込んでいく様は、展開構成と相俟ってとても面白い。
ただノラが、何故息子のことや仕事までも疎かにしてまで、のめり込んでいったのかという理由はスルーなので、終始違和感はあったりします。
明確な動機、決定的な証拠、更には死体すら見つかっていないのに行われる裁判の異常性。にもかかわらず、有罪になりそうな流れ。
最終弁論のデュポンの弁舌が、その流れを断ち切るように挿し込まれますが、唐突感もあり、エモーショナルな感情は湧き難い。
とはいえ、全体的な語り口は軽妙且つ巧妙なので、惹きつける力は十分。
前述したようなノラが捜査にのめり込んでいくことの違和感、最終弁論のシーンの唐突感が気にならなければ、しっかりと堪能できる作品だと思います。私的には楽しめました。
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